アートギャッベ展での気付き。UPDATE. 2019.5.15
今回もすっごくワクワク・・・
いつものように、素敵なアートギャッベが、ここいとしやにやって来ています。
私が今回ご紹介したいのは、こちらのアートギャッベ。
152cm×198cmのソファの前にい〜い感じのサイズです。
草木染めをしていない原毛をベースに、インディゴで染めた濃淡のあるブルーのグラデーションがとても美しいです。
原毛部分を見ていると、現地にはいろんな毛の色の羊が飼われていることがわかります。
織り子さんの想い
象徴的な真ん中のモチーフは、『生命の樹』と呼ばれているもので、イトスギという樹です。
雨の少ない荒涼とした大地に、しっかりと根をおろし、逞しく育つその樹に、遊牧民が寄せた想いは、「健康・長寿」。
確かに、我々が生きていて、幸福感に繋がる、最も大事な要件ではないでしょうか。
個人にとっても、家族にとっても、民族にとっても、健康で長生きすることは、本当に大事ですよね。
忙しい日常生活の中で、現代人がついつい忘れがちなことですが・・・。
その生命の樹の根元には、小さなオレンジ色の鹿が、樹を挟むように、向かい合って2匹います。
カシュガイ族にとって、鹿は『家庭円満』の象徴。
家庭が円満、皆んなが、仲がいいことこそが、健康長寿に繋がったいくんだと、語っているようです。
大地にしっかりと根をはる大樹を、下から見上げるとこんな感じ。
そして、その大樹には、グリーンをベースにした、一見お花畑にも見える色とりどりの可愛い花が、咲き乱れています。
赤、白、オレンジ、黄色、光の方向によってはピンクも入っているように見えます。
生命の樹の力強さ、大地の大きさ、空のおおらかさ、鹿の可愛らしさ、そして花々の可憐さ・・・。
色が育つ
草木染めで染められたギャッベの色が、長い年月を経て変わる様を、遊牧民カシュガイ族は『色が育つ』と表現します。
このギャッベもまた、これから使う家族の想いと、当たり前で貴重な時間が織り込まれ、金銭的価値では計れないものになっていくんでしょうね。
その家族が、大分のどこかにいてくれると嬉しいですが・・・。笑
話は変わりますが、
最近のアートギャッベ展で、ちょっと気になることがあります。
それは、いとしやが『アートギャベ展』を始めた8年前に比べると、ご来店のお客様が、ギャッベの情報をかなりお持ちで、ネットや雑誌等で、いろいろなデザインを見ているからだと思いますが、それは大切なことだと思うのですが、気になるのは、例えば、「モチーフは柘榴が真ん中にあって、サイズは2m×2.5mぐらいまでで、色はグリーンのグラデーション、明るめよりもどちらかというと深い感じ・・・」というような具体的なビジュアル要素のみでギャッベを探しておられる方をお見受けするようになりました。
はっきり言って、
根本的にアートとしてのギャッベを選ぶ価値観の軸が違うと私は思います。
まず、お部屋に合う合わないとかとかいうのは、インテリアのコーディネートの要素が強く、それは、アートを選ぶ軸ではありません。(工業製品を選ぶ基準ですね。)
想像で創り上げられたビジュアルイメージが、必要以上の情報によって具体的になればなるほど、「これは違う。あれも違う。」となってしまい、いつまでたっても、そのビジュアル要素以外の、ギャッベとともに暮らす本当の心地よさ(価値)は、体感できないのです。
私たちも、ついお客様の探してるものを見つけてあげようとしますが、本来アートとは、『探すものではなく、出会うもの』。
遊牧生活をしながら、彼女たちの純粋な心で自然から受け止めたインスピレーションを持って、絨毯という形に表現したものが、アートギャッベであり、それを私達の知性ではなく感性で受け止めて行くことが、アートギャッベを持つ魅力なんですけどね。
羊と共に生きる遊牧民カシュガイ族が、その歴史、伝統、風土から培ってきたギャッベを織る技術や想いを、まずは丁寧に受け止め、感謝と敬意を持って、唯一無二の出会いを愉しむ。
これこそが、アートギャッベのある暮らしの価値だと思います。
いつの間にか、人間は悪気は無しに、我が儘になっていきます。
刹那的な所有欲が満たされることを探し、時間をかけてこそ感じられる育む嬉しさや喜びを忘れてしまっているのです。
新しい命を授かる時、容姿端麗で、頭が良くて、スポーツ万能で、健康で、素直で、優しくて・・・・、そんな完璧な赤ちゃんはいません。笑
全てを個性として受け止める側に、大きな深い尊い気持ちが、ゆっくりとゆっくりと育まれて行くんではないでしょうか。
そうやって、その人らしい感性を身につけ、その人らしい素敵な人生を味わう。
アートギャッベには、これから人間が作り出すますます便利で快適な個人の快楽とは、別の世界があります。
それは一言で言うと、落ち着き。
暮らしの中に落ち着きのある時間や空間なくして、幸福感は得られないでしょう。
これからも私達は、このアートギャッベの深〜い世界を先に知ったものとして、ご来店の皆様に丁寧にお伝えしていきます。
どうか、アートギャッベは、そんな謙虚なスタンスで感じて頂ければ、嬉しく思います。
眠り屋 店主